猫の尿路感染症を予防する日常ケア

ねことぴあ編集部

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はじめに

猫の尿路感染症は、膀胱や尿道に細菌が感染することで起こる病気です。頻繁な排尿や排尿時の痛み、血尿などの症状が見られます。放置すると重症化し、尿道閉塞や尿毒症など命に関わる危険性もあるため、早期発見と適切な治療が大切です。この記事では、獣医師が教える尿路感染症の予防法と、症状に気づいたときの対処法について解説します。

猫の尿路感染症の原因と症状

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猫の尿路感染症は、細菌やウイルスが尿路に感染することで起こる病気です。適切な治療を行わないと、重症化するリスクがあります。ここでは、尿路感染症の原因と症状について詳しく説明します。

尿路感染症の原因

尿路感染症の原因は、以下のようなものがあります。

細菌感染

  • 大腸菌、ブドウ球菌、緑膿菌などの細菌が、尿路に感染します。
  • 細菌は、腸管や皮膚、口腔内などから上行性に尿路に侵入します。
  • メス猫では、尿道が短いため、細菌が膀胱に到達しやすくなっています。

ウイルス感染

  • 猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIP)や猫白血病ウイルス(FeLV)などのウイルスが、尿路に感染することがあります。
  • ウイルス感染は比較的まれですが、重篤な症状を引き起こすことがあります。

真菌感染

  • カンジダ属などの真菌が、尿路に感染することがあります。
  • 真菌感染は、免疫力の低下した猫に多く見られます。

尿路結石

  • 尿路結石が尿路を傷つけることで、感染のリスクが高まります。
  • 結石による尿路の閉塞は、尿のうっ滞を引き起こし、細菌の増殖を促進します。

尿道カテーテル

  • 尿道カテーテルの留置は、細菌の侵入経路となることがあります。
  • カテーテルの長期留置は、感染のリスクを高めます。

免疫力の低下

  • 高齢猫や基礎疾患のある猫は、免疫力が低下しています。
  • 免疫力の低下は、感染に対する抵抗力を弱め、尿路感染症のリスクを高めます。

尿路感染症の症状

尿路感染症の症状は、以下のようなものがあります。

頻尿

  • トイレに行く回数が増える
  • 少量ずつ頻回に排尿する
  • トイレ以外の場所で排尿する

血尿

  • 尿に血が混じり、ピンク色や赤色になる
  • トイレの猫砂に血の斑点がある

排尿困難

  • トイレで長時間過ごす
  • 排尿時に鳴き声を上げる
  • 排尿姿勢をとるが、尿が出ない、または少量しか出ない

排尿時の痛み

  • 排尿時に痛みを感じ、鳴き声を上げたり、逃げ出したりする

尿のにおいの変化

  • 尿のにおいが強くなる
  • 異臭がする

発熱

  • 体温が上昇し、39.5℃以上になる

食欲不振

  • 食欲が低下し、食べる量が減る

活動性の低下

  • 元気がなくなり、動きが鈍くなる
  • 隠れがちになる

これらの症状は、他の尿路疾患でも見られることがあります。確定診断には、尿検査や尿培養検査が必要です。

尿路感染症は、早期発見と適切な治療が重要です。症状に気づいたら、速やかに獣医師に相談しましょう。重症化すると、腎盂腎炎や敗血症など、重篤な合併症を引き起こすことがあります。

飼い主さんができることは、日頃から猫の排尿状態に注意を払うことです。トイレの回数や尿の色、においの変化など、小さな異変も見逃さないようにしましょう。また、定期的な健康チェックで、尿路の健康状態を確認することも大切です。

尿路感染症の予防に役立つ日常ケア

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尿路感染症を予防するために、飼い主さんができる日常のケアについて説明します。適切な予防法を実践することで、愛猫の尿路の健康を守ることができます。

1. 十分な水分補給

水分補給は、尿路感染症の予防に最も重要な要素の一つです。

新鮮で清潔な水の提供

  • 常に新鮮で清潔な水を提供し、猫が好む場所に水飲み場を設置します。
  • 水飲み場は、食事の場所から離れた静かな場所に置くのが理想的です。

水分摂取量の増加

  • ウェットフードを積極的に取り入れることで、水分摂取量を増やすことができます。
  • 水分量の多いトッピングを活用するのも効果的です。

水飲み場の工夫

  • 猫の好みに合わせて、水飲み場の種類や位置を変えてみましょう。
  • 水の流れる噴水型の水飲み器を使うと、水分摂取量が増えることがあります。

2. 清潔なトイレ環境の維持

清潔なトイレ環境は、尿路感染症の予防に欠かせません。

トイレの適切な配置

  • トイレは、静かで落ち着ける場所に設置します。
  • 複数の猫を飼っている場合は、トイレの数を十分に用意します。

トイレの清掃

  • トイレは毎日清掃し、衛生的に保ちます。
  • 猫砂は定期的に交換し、尿や便の残りがないようにします。

好みの猫砂の選択

  • 猫の好みに合った猫砂を選びます。
  • 砂の種類や粒の大きさ、香りなどを工夫してみましょう。

3. ストレス管理

ストレスは、尿路感染症のリスクを高める可能性があります。

環境エンリッチメント

  • 猫が快適に過ごせる環境を整えます。
  • 隠れ家やハイポジション、爪とぎ、おもちゃなどを用意し、猫の自然な行動を促します。

他の猫との関係への配慮

  • 複数の猫を飼っている場合は、ケンカや競争を避けるための工夫をします。
  • 資源(トイレ、食器、寝床など)を十分に用意し、ストレスを軽減します。

飼い主さんとのコミュニケーション

  • 毎日、猫と遊ぶ時間を設けます。
  • ブラッシングやマッサージで、猫とのスキンシップを図ります。

4. 定期的な健康チェック

定期的な健康チェックは、尿路感染症の早期発見と予防に役立ちます。

年に1~2回の健康診断

  • 年に1~2回、獣医師による健康診断を受けます。
  • 尿検査で、尿路感染症の有無をチェックします。

尿のモニタリング

  • 家庭でも、猫の排尿状態に注意を払います。
  • 頻尿、血尿、排尿困難などの症状があれば、速やかに獣医師に相談します。

基礎疾患の管理

  • 尿路結石や糖尿病など、尿路感染症のリスクを高める基礎疾患がある場合は、適切に管理します。
  • 獣医師の指示に従い、食事療法や薬物療法を行います。

5. 適切な抗菌薬の使用

尿路感染症の治療には、抗菌薬が用いられることがあります。

獣医師の指示に従う

  • 抗菌薬は、獣医師の指示なく使用してはいけません。
  • 不適切な抗菌薬の使用は、耐性菌の出現につながります。

投与期間の厳守

  • 抗菌薬は、指示された期間、きちんと投与します。
  • 症状が改善しても、途中で投与を中止してはいけません。

再発の監視

  • 抗菌薬の投与終了後も、再発の有無を注意深く観察します。
  • 再発が疑われる場合は、速やかに獣医師に相談します。

尿路感染症の予防には、飼い主さんの日頃からのケアが欠かせません。適切な水分補給、清潔なトイレ環境、ストレス管理、定期的な健康チェックを心がけましょう。

尿路感染症が疑われるときの対処法

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尿路感染症は、適切な治療を行わないと重症化するリスクがあります。尿路感染症が疑われる場合の対処法について説明します。

1. 獣医師への相談

尿路感染症の症状に気づいたら、まずは獣医師に相談することが大切です。

症状の報告

  • 頻尿、血尿、排尿困難など、気づいた症状を詳しく伝えます。
  • 症状が始まった時期や、症状の程度についても報告します。

尿検査の実施

  • 獣医師は、尿検査を行って尿路感染症の有無を確認します。
  • 尿の色、濁り、pH、潜血、白血球、細菌の有無などを評価します。

尿培養検査の実施

  • 必要に応じて、尿培養検査を行います。
  • 尿中の細菌を同定し、適切な抗菌薬を選択するために重要な検査です。

2. 抗菌薬の投与

尿培養検査の結果に基づいて、適切な抗菌薬が選択されます。

獣医師の指示に従う

  • 抗菌薬の種類、用量、投与期間は、獣医師の指示に従います。
  • 自己判断で抗菌薬を変更したり、中止したりしてはいけません。

規則正しい投与

  • 抗菌薬は、指示された時間に規則正しく投与します。
  • 飲み忘れがないよう、工夫しましょう。

副作用の監視

  • 抗菌薬の投与中は、副作用の有無を注意深く観察します。
  • 食欲不振、嘔吐、下痢などの症状があれば、獣医師に報告します。

3. 補助療法

抗菌薬の投与と並行して、補助療法を行うことで治療効果を高めることができます。

水分補給の促進

  • 十分な水分補給は、尿路の洗浄効果を高めます。
  • 新鮮な水をいつでも飲めるようにし、ウェットフードを取り入れることも効果的です。

尿のアルカリ化

  • 尿をアルカリ性に保つことで、細菌の増殖を抑制できます。
  • 重曹やクエン酸カリウムなどのサプリメントを活用することがあります。

鎮痛剤の投与

  • 尿路の炎症による痛みを和らげるために、鎮痛剤を投与することがあります。
  • 獣医師の指示に従い、適切に使用します。

4. 環境の管理

尿路感染症の治療中は、猫の生活環境を整えることも大切です。

トイレ環境の整備

  • トイレを清潔に保ち、猫が快適に排尿できるようにします。
  • トイレの数を増やすことで、ストレスを軽減できます。

ストレスの軽減

  • 静かで落ち着ける空間を用意し、ストレスを最小限に抑えます。
  • 他の猫との関係にも配慮し、ケンカや競争を避けるようにします。

安静の確保

  • 治療中は、過度な運動を控えめにし、安静を保つようにします。
  • 隠れ家や高い場所など、猫が安心できる場所を用意しましょう。

5. 再発の予防

尿路感染症は再発しやすい疾患です。再発を防ぐために、以下の点に注意しましょう。

抗菌薬の投与期間の厳守

  • 指示された期間、抗菌薬を投与し続けることが重要です。
  • 症状が改善しても、途中で投与を中止してはいけません。

尿検査によるフォローアップ

  • 抗菌薬の投与終了後、再度尿検査を行い、感染の有無を確認します。
  • 再発の兆候があれば、速やかに獣医師に相談します。

予防法の実践

  • 十分な水分補給、清潔なトイレ環境、ストレス管理など、予防法を継続して実践します。
  • 基礎疾患がある場合は、適切に管理することが重要です。

尿路感染症が疑われる場合は、獣医師との連携が欠かせません。早期の診断と適切な治療で、愛猫の尿路の健康を守ることができます。

尿路感染症の再発を防ぐポイント

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尿路感染症は、適切な治療を行っても再発することがあります。再発を防ぐためのポイントについて説明します。

1. 抗菌薬の適切な使用

抗菌薬の適切な使用は、再発予防に不可欠です。

投与期間の厳守

  • 獣医師に指示された期間、抗菌薬を投与し続けることが重要です。
  • 症状が改善しても、途中で投与を中止してはいけません。

再発時の尿培養検査

  • 再発した場合は、再度尿培養検査を行い、適切な抗菌薬を選択します。
  • 前回と同じ抗菌薬が効かないこともあるため、検査結果に基づいた選択が必要です。

予防的な抗菌薬の使用

  • 頻回に再発する場合は、予防的に抗菌薬を使用することがあります。
  • 獣医師と相談し、適切な予防法を検討しましょう。

2. 尿路結石の管理

尿路結石は、尿路感染症の再発リスクを高めます。

結石の除去

  • 尿路結石がある場合は、外科的に除去することが重要です。
  • 結石が残っていると、感染を繰り返す可能性が高くなります。

食事療法

  • 尿路結石の種類に応じた食事療法を行います。
  • ストルバイト結石の場合は、尿のpHを弱酸性に保つ食事を選びます。
  • シュウ酸カルシウム結石の場合は、尿量を増やすように設計された食事を選びます。

水分補給の促進

  • 十分な水分補給は、尿路結石の予防に役立ちます。
  • 新鮮な水をいつでも飲めるようにし、ウェットフードを取り入れることも効果的です。

3. 基礎疾患の管理

基礎疾患は、尿路感染症の再発リスクを高めます。

糖尿病の管理

  • 糖尿病は、尿路感染症のリスクを高めます。
  • 血糖値を適切にコントロールし、合併症を予防することが重要です。

腎不全の管理

  • 腎不全は、尿路感染症のリスクを高めます。
  • 食事療法や薬物療法で、腎機能の悪化を抑えることが大切です。

免疫力の向上

  • 免疫力の低下は、尿路感染症の再発リスクを高めます。
  • バランスの取れた食事や適度な運動で、免疫力を高めることが重要です。

4. 尿pHのコントロール

尿のpHは、尿路感染症の再発に影響を与えます。

酸性尿の維持

  • 尿を弱酸性に保つことで、細菌の増殖を抑制できます。
  • 獣医師と相談し、適切な食事療法やサプリメントの使用を検討します。
  1. アルカリ性尿の予防

  • アルカリ性の尿は、細菌の増殖を促進します。
  • ストレスの軽減やpH調整食の活用で、アルカリ性尿を予防しましょう。

尿pHのモニタリング

  • 定期的に尿pHを測定し、適正範囲に保つことが大切です。
  • 家庭でも尿試験紙を使って、尿pHをチェックすることができます。

5. 予防法の継続

尿路感染症の再発を防ぐには、予防法の継続が欠かせません。

水分補給の維持

  • 十分な水分補給を継続し、尿路の洗浄効果を高めます。
  • 新鮮な水をいつでも飲めるようにし、ウェットフードを積極的に取り入れます。

トイレ環境の清潔維持

  • トイレを清潔に保ち、細菌の増殖を抑制します。
  • 猫砂は定期的に交換し、トイレは毎日掃除しましょう。

ストレス管理の継続

  • ストレスは尿路感染症の再発リスクを高めます。
  • 環境エンリッチメントやフェロモン製品の活用で、ストレスを軽減しましょう。

尿路感染症の再発を防ぐには、飼い主さんと獣医師の協力が不可欠です。抗菌薬の適切な使用、基礎疾患の管理、予防法の継続など、総合的なアプローチが必要です。

まとめ

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猫の尿路感染症は、適切な日常ケアと早期発見・早期治療で予防することができます。十分な水分補給、ストレス管理、トイレの清潔維持などが重要なポイントです。症状に気づいたら、すぐに獣医師に相談し、的確な診断と治療を受けることが大切です。また、再発防止のために、食事療法や環境改善、定期検診などを継続的に行うことが求められます。飼い主さんと獣医師が連携し、愛猫の尿路の健康を守っていきましょう。

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